株式会社WEBマーケティング総合研究所様
世界中に数十万ものユーザーを持つ米国Amazon社のクラウドサービス「AWS」。野村総合研究所グループのNRIネットコムが、その本格的な運用サービスに乗り出した。各界の期待を集めるAWSソリューションの強みは何か。導入企業の事例を追ってみた。(「Wedge創刊25周年企画 ニッポンを前に進める企業」より引用)
「小さく始めて大きく育てるホームページ作成」─。そんなキャッチコピーで8,000社を超える顧客企業のネットビジネスを支援するWEBマーケティング総合研究所(以下、WEB総研)が、増大するシステムの運用性を高めるためにAWSのクラウド導入に踏み切ったのは、2012年のことだ。AWS(Amazon Web Service)は米国アマゾン社が提供する世界最大級のクラウドサービスで、約190カ国に数十万もの顧客を持つ。
ユーザーが必要に応じてネットワーク上のサーバやデータベースを使い、料金を支払うクラウドサービスは、自社ですべての設備を保有・管理するよりも格段に低いコストで効率よくシステムを運用できるため、このところ急速に利用価値が高まっている。AWSはその代名詞ともいえる存在だ。
WEB総研の場合も、10年前に始めた専門的なITスキルを持たない中小企業向けのホームページ制作・運用サービスが急成長を遂げるなか、その膨大なWEBサイトを古くなった自前の環境で動かすには限界が見えていた。特にWEBシステムは、アクセスが集中するピークタイムを見越したサーバの準備が求められるため、夜間など閑散タイムには余剰のリソースを抱えざるを得ない。しかしAWSを活用すれば、オンデマンド方式だから状況に合わせて自動的にサーバの増減が管理され、コストも大幅に削減することができる。吉本俊宏社長はこう話す。
「当社ではコストもさることながら、運用面でのメリットを重視しました。ハードウェアの故障・老朽化、セキュリティ、停電対策、バックアップ、運用監視。それらすべての手間ひまから解放される利点は大きい。そのぶん、本来的なビジネスに集中できますから」
だが、課題もある。AWSの機能を十分に引き出すには、その特性を熟知し、システム構築とクラウド運用の両方に精通した専門の人材を介在させるべきである。しかし、日本にはまだそのレベルの技術者は極めて少ない。かつて大手銀行でシステム開発を担当した経歴を持ち、そのことをよく知る吉本氏は開発パートナー選びに迷う。
解決策をもたらしたのは、かねて取り引きのあったNRIネットコムだった。野村総合研究所グループの一員で、早くからWEBシステム構築を手がけるなどインターネット技術開発で一日の長がある同社から折よく、WEB総研に対してAWS活用の提案が持ち込まれたのだ。聞けば、NRIは世界に二十数社しかないAWSのプレミアコンサルティングパートナーであるという。数年前からまず自社内の開発環境にAWSを導入し、その拡張性や柔軟性、信頼性を自ら実証したうえでの、満を持してのプレゼンだった。
「クラウド環境の提供だけが私たちの役割ではありません。そこで働くシステムの構築からアプリケーション開発、運用管理・監視に至るまで、あらゆるサービスを適宜組み合わせて使っていただく。そのことでお客様の手間が省け、ビジネスが拡がれば本望です」
同社Webインテグレーション事業部の塩崎冠部長と佐々木拓郎課長がそう口をそろえるスタンスは、顧客である中小企業の成長を支えることで自社もまた成長を続けてきたWEB総研の理念とも合致する。吉本氏が言うように、少し前までのクラウドに対する企業の疑心暗鬼は今や解消した感がある。大手から中小まで、本格的なビジネス利用の機運が高まっているようだ。