実績紹介

電力会社の膨大なデータをマーケティング資源として活用する、データ分析基盤の構築をサポート

東北電力フロンティア株式会社

(左)マーケティング本部 データアナリティクス部 リーダー 野田直樹様(中央)同副部長 太田和宏様(右)NRIネットコム クラウド事業推進部 上級システムエンジニア 松本祐樹

新会社設立と新規事業開始を機に、自社の大量データを活用するためデータレイク(多様な形式と大容量のデータを集約・保存するデータ管理アーキテクチャの一つ)を中心としたデータ分析基盤をAWSで構築された東北電力フロンティア株式会社の太田和宏様と野田直樹様にお話を伺いました。

<お話を伺った方>

太田和宏様
マーケティング本部 データアナリティクス部 副部長
新卒では商社勤務、スタートアップ、メガベンチャーを経て、前職は大手グローバル住宅設備メーカー 社長戦略室で日本国内全域のデジタルマーケティング高度化に従事。2021年3月:東北電力株式会社 事業創出部門入社。同年4月:東北電力フロンティア株式会社 データアナリティクス部に出向。デジタルマーケティング、データ分析高度化を推進。

野田直樹様
東北電力子会社にて基幹システムやサービス基盤の設計・構築を担当。また、パブリッククラウド活用推進に従事。2021年5月 東北電力フロンティア株式会社 データアナリティクス部へ出向。データ基盤の設計やデータ分析高度化を担当。

膨大なデータの活用に向けてデータ基盤構築に着手

太田様:弊社は東北電力グループのスマート社会実現事業の中核となる企業として2021年4月に設立され、電気と各種サービスを組み合わせたパッケージ商品や、暮らしを豊かにするサービスを提供しています。例えば、電気と動画配信サービスのNetflixをセットにした料金プランや、太陽光発電の設備を提供してエコな電気をご利用いただける独自プランのほか、IoT技術を活用したお子様の見守り、好みのコーヒーが毎月届く定期便など、電気から離れた分野でも多岐にわたるサービスを提供しています。

東北電力グループは、インフラ事業ゆえ社内に貯まったデータが膨大で、ビジネスに活用しきれていないという課題を抱えていました。市場における競争力を確保するには、効果的なマーケティングを行い、新たなサービスを創出していかなければなりません。弊社はその役割を担い、次世代のデジタル技術の活用やデジタルイノベーションにより、先進的なサービスを提供する企業として設立されました。

既存の商品やサービスをブラッシュアップしていくためには、データそのものが使いやすく整備されている必要があります。また、効果的な商品開発のためにはデータに基づく判断、いわゆるデータドリブンの精度を上げたいというニーズもありました。そこで、データ活用推進サポートの実績を持つNRIネットコムに支援を依頼しました。

松本:NRIネットコムは、以前より東北電力様のデジタルマーケティングをご支援していました。東北電力グループの中長期ビジョンのもと、今後はデータを基軸としたデジタルマーケティングを強化していくということで、サポートのご依頼をいただきました。

太田様:デジタルマーケティングという大きな枠組みの相談から始まり、弊社の事業方針を実現するための施策を横断的にご支援頂いています。弊社には「お客様に寄り添ったサービスを提供したい」という目的があります。それを実現するために、現在保持している膨大なデータを活用しやすい形に整備し、データ基盤を構築することを提案していただきました。

松本:「データを活用して、こういうターゲット層にこういう施策を行いたい」と新規事業でのデジタルマーケティング施策の考えをお持ちでした。まずデータ活用チームが、現状どのような社内データが使えるのか、Web行動データを計測するためには何をいつ作業しないといけないのか、広告・プロモーションではどのセグメントにどの媒体・手法を用いるか等を整理し、MAツールの選定と導入を推進しました。これに並行して、データ基盤チームでは、データ活用チームと連携しながら要件定義を行い、データ基盤全体の構成をまとめ、構築を進めていきました。

野田様:特にデータ基盤の部分は、社内には工数も経験値も不足していたので、NRIネットコムさんのような知見と実績をお持ちのパートナーに伴走していただけて心強かったです。

コミュニケーションを重視し、効率的にプロジェクトを進行

野田様:データを整理していく過程には、弊社のようなインフラ企業だからこその苦労があったと思います。電気契約や使用実績、Web行動データといった膨大なデータがさまざまな組織にバラバラに存在しており、それらを1箇所に集約させるには、多くの部署との調整が必要でした。

松本:各データを主管する部署・システムが違うため、データを提供していただく際のルールや仕様・制約もそれぞれでしたが、会社・部署を横断したWeb会議でデータ連携インターフェース仕様を円滑に整理できたことで、データ基盤側の構築に注力していくことができました。

野田様:ケタ違いのデータ量なので、それを扱うだけでもシステムが堅牢でなくてはなりません。加えてセンシティブな個人情報でもあるので、取り扱いに細心の注意が必要でした。NRIネットコムさんとは、同じチームのメンバーとして毎日のようにやり取りをしており、新たなニーズや作業途中での変更が出てくるたびに相談したり助言をいただいたりして、柔軟に対応していただくなかで、「任せられる」という感覚を持っていました。

松本:最初の数ヶ月で業務やデータソースに関わる要件、ETLやセキュリティ、パフォーマンス要件等の整理をするのですが、データ基盤構築のフェーズになるとテストをしてみて初めて考慮不足に気づくということは、率直に言って少なくありません。変更は必ず生じるものとして対応にあたります。スケジュールを遅らせないためにも野田さんとは密にコミュニケーションを取らせていただき、課題の解決策提示から意志決定は早かったと思います。

野田様:プロジェクトを立ち上げて1年弱で全体の方針を決めて、2021年4月からデータ基盤の基本設計を始め、8月末にはデータの収集・加工・蓄積といった一連のETLの稼働とデータレイクの運用を開始しました。その後、10月〜11月にはMAツールとデータ連携ができるようになりデータを活用したメールマーケティングを開始しました。スピード感のあるプロジェクト進行で、NRIネットコムさんには多大なご尽力をいただきました。

太田様:懸念事項に対してアラートを出すタイミングが遅れると、プロジェクトが立ち行かなくなることもあります。松本さんは、そうした懸念事項をいち早く察知してしっかりとコミュニケーションを取ってくれました。問題点の把握や情報共有ができていたことは非常に良かったですね。

松本:今回は、弊社側でデータ活用チームのコンサルティングやツール選定活動と並行して、データ基盤チームが要件定義や構築を進めたことが特徴的だったと思います。2チームが互いの進捗や課題を毎日共有しながら取り組んだことでチーム間での大きな認識齟齬や矛盾が発生せず、東北電力フロンティア様のスケジュールやニーズに迅速に対応することができました。

太田様:エンジニアのみなさんも含めて一つのチームとして取り組めたことに安心感がありましたし、全てのフェーズにおいて、みんなで一緒に作っていこうという意識も生まれ非常に心強かったです。

高い専門性と幅広い知見が包括的なサポートを可能に

太田様:今回、データ基盤の構築にAWSを選定しました。これまで社会インフラ系はセキュリティの問題からクラウド利用に消極的でしたが、近年では公共機関や官公庁などがAWSを採用し始め、インフラ事業者もパブリッククラウドを利用する機運が出てきたと思います。やはり、今回のようなプロジェクトを迅速に進めるには、パブリッククラウドを使うことでメリットが得られますし、NRIネットコムさんにはAWSに精通したエンジニアが大勢いらっしゃるので、安心してデータ基盤構築を進めることができました。

松本: 弊社にはAWSの認定資格を取得したエンジニアが多数、在籍しています。認定資格を取得することにより、専門知識を体系的に学び、お客様のニーズに対してAWSを活用した最適なソリューションをご提案するスペシャリストを育成していると自負しています。

野田様:AWSの認定資格を取得したエンジニアが対応していただけるということは、知識とスキルの両面で信頼できると感じています。

また、今回MAツールにはAdobe Marketo Engageを採用しており、データ基盤との連携によってデータを活用したデジタルマーケティングのPDCAを効率的に回すことが実現できています。メールマーケティングでは、ターゲット別にご案内する内容やコンテンツを変えていますが、実施したメールマーケティングが本当にフィットしていたかどうか、回答率やクリック率で確認し、分析できるようになりました。

松本:プロジェクトの全体像、データ基盤のアーキテクチャ、運用課題を把握していますので、今後も何かご要望があがったときに、実現可能なイメージをその場でお話し、必要であれば社内のスペシャリストに取り次ぐことができます。包括的にサポートさせていただきますので、気になることがありましたら、お声がけください。

太田様:雑談がてらに進行中の案件について確認ができたり、その場で作業の規模感を見積もっていただけたり、気軽に相談できました。今後、新規事業を進めていく上でも、頼もしいビジネスパートナーと思っています。

参考アーキテクチャ

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