NRIネットコム株式会社
老朽化したオンプレミスのファイルサーバを、アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)環境に移行した事例をご紹介します。
NRIネットコム 平山さん 伊藤さん
当社は2023年で創立32年を迎えましたが、過去に何度かファイルサーバ移行を実施しています。最後に行ったのは2015年です。当然、ファイルサーバのデータ容量は肥大しており、利用に大きな支障が出ているわけではありませんでしたが、運用にあたっては、いくつかの課題がありました。
オンプレミスの環境ではサブストレージを用意していましたが、障害が発生した際には、手動でのストレージ切り替えが必要でした。また、サーバはオフィス内のサーバルームに設置していましたが、メンテナンス等で定期的にオフィスビル全館の停電があり、復旧の際にも手間がかかりました。容量不足に伴い増設しようと思っても、機器の購入から始めなければなりませんし、OSにパッチを当てるなどの保守作業も必要です。
そうした運用負荷を軽減するためにも、オンプレミスからクラウド環境への移行を検討し始めました。
クラウド環境の選定にあたっては、サーバの冗長性やセキュリティ面、データ保証などいくつかの要件を設け、比較を行ってAWSに決定しました。
選定の要件として設定したのは以下のようなポイントでした。
利用面
セキュリティ面
データ保証
運用・その他
こうした要件の中でも、現行のアクセス Path が継続利用できることは重要でした。社内連絡やドキュメントなどに数多くアクセスPathが埋め込まれていたため、変更はできる限り避けたいところです。また多くの社員が使うファイルサーバの移行ですから、たとえば各社員が使っているファイルサーバへのショートカットがそのまま使える方が、移行後の混乱も問い合わせも防げます。フォルダ数が非常に多いので、移行にかかる工数ができるだけ抑えられることも重要なポイントでした。
こうした要件を満たしたのがAWSでした。重要データは万が一の大規模災害発生時にもデータ保全するために遠隔地にも保管しておくことが必須ですが、AWS backupの機能が利用できることや、社内にAWSの知見を持ったメンバーが多くいたことも、選定理由の一つですね。
まずAmazon FSxの環境構築を行って、その後データを移行する作業を行いました。
Amazon FSxは、Windows ファイルシステム機能と、ネットワーク経由でファイルストレージにアクセスするためのサーバーメッセージブロック (SMB) プロトコルをネイティブでサポートしています。過去に、LinuxサーバからWindowsサーバへの移行を実施した経験から、異なるOSに移行する苦労を知っていたので、Windowsサーバとしてそのまま移行できるのは楽でしたね。
データの移行は、当初はAWS DataSyncを用いて実施する予定でした。しかし事前の調査で、オンプレミスを設置している拠点側の環境では、AWS DataSyncを利用できないことがわかりました。そこで、前回のファイルサーバ移行時に使用したツールを利用することにしました。もちろん事前に、AWS DataSyncと比べてコピー速度に差がないか、柔軟に対応できるかなどを検証しました。
このツールを使って、リリースまでの土日や平日夜間を使って段階的にコピーを実施。データコピーが成功したかどうかはコピーログで確認しながら、慎重に進めました。
元のサーバに格納されているフォルダ数、データ数が非常に多かったため、事前に社内に整理を呼び掛けておいたこともあり、約1か月でデータ移行が完了しました。
要件定義を開始してから、移行を完了するまでは約半年です。ただ、最初の3か月はゆるやかに要件定義を始め、経営層への説明や検証を行っていたので、実際の構築から移行までは2~3ヵ月でしたね。
社内のAWS専門メンバーもアサインできたため、認証情報のつなぎ込みが少し面倒だったぐらいで、計画通りに順調に進めることができました。
<移行後の構成>
複数台のファイルサーバを一つにまとめたことで、管理負荷は低減することができました。
具体的に楽になったのは以下のような点です。
社内でほとんど混乱が発生しなかったことは、本当によかったと思っています。
こうしたプロジェクトは、ユーザーである社員が、変化に気付かないような状態で完遂するのがベストです。そういう意味では、大きな混乱もなく、多くの社員が意識することもなく終えられたことは、成功だと思っています。
NRIネットコムでは、マイグレーションを始め、クラウドに関する多くのプロジェクトを手掛けています。
社内に専門スタッフがいない、知識や経験に不安があるといった場合でも、経験豊富なスペシャリストが丁寧にサポートいたします。
ぜひ、お気軽にご相談ください。