実績紹介

生成AI(Gemini )の活用に向け、トレーナー制度の立ち上げから100人規模の勉強会開催に至るまで~中国新聞様~

株式会社 中国新聞社様

(左から)株式会社 中国新聞社 メディア開発局次長 片山学様、メディア開発局 明知隼二様、 NRIネットコム株式会社 クラウドテクニカルセンター 和田将利

株式会社中国新聞社様では、全社的に生成AIを活用する取り組みとして、AIを“パートナー”として活用する様々な取り組みを行っています。

業務に生成AIを活用しようと検討する企業は日々増加していますが、社員や部署によって温度差もあり、ルールづくりも含め、積極的な活用に至っていないケースも多くみられます。そんな中で中国新聞様では一体どうやって活用を推進することができたのでしょう。

単なる補助的なツールを超えてAIを仕事の“パートナー”にするために行ったAIトレーナー制度の導入から、NRIネットコムがご支援したGemini 勉強会までの取り組みを、株式会社中国新聞社 の片山学様、明知隼二様に伺いました。

<お話を伺った方>

株式会社 中国新聞社 メディア開発局次長 片山 学様
株式会社 中国新聞社 メディア開発局 明知 隼二様

社内での個別利用に危機感。全社統一した生成AIの活用を模索

片山様:最初に生成AIの活用を検討しはじめたのは2024年夏頃のことです。当時の社内では、使いたい人が個別でChatGPTや無料のAIを利用している程度で、利用状況にばらつきがありました。試行錯誤しながら活用の検討を進めていましたが、Google Workspace でGemini が標準搭載となったことをきっかけに、2025年5月に本格的に全社に導入を始めました。ただ、情報セキュリティの懸念やどのように活用すればよいか分からないという声が上がったため各部署から生成AI活用をけん引するAIトレーナーを選出して推進することにしました。

和田:生成AI活用にあたって「AIトレーナー制度」を設けるという発想はどこから生まれたのでしょうか。

片山様:東京のAI博覧会など様々なところに勉強に行き、色々な事例を見て考えました。我々は新聞社という特性もあり、営業部門、編集部門、バックオフィスなど、部署によって業務の内容が大きく異なります。生成AIの活用を広めていくためには、各部署での使い方を見極める必要があると感じました。そこで、社内から選出された20名をAIトレーナーとして育成していくことにしたんです。

社内でどんどん広めていきたいという気持ちがあったので、各部署にはAIについての知識が高い人でなくても、部内で存在感がある人、「この人の言うことなら」と思ってくれる人材を選んでほしいと依頼しました。結果的に、中堅層が多かったですね。

これで推進環境が整ったと思ったのですが、トレーナー20名に対しての研修が整っていないという課題が新たに生まれました。

和田:ちょうどその頃からお話を伺うようになりました。

明知様:その時、弊社のニュースサイト「中国新聞デジタル」のリニューアルをNRIネットコムお願いしていました。お話をする中で生成AIに関する勉強会のサポートもしていただけるとうかがってお願いすることにしました。

片山様:社内でトライアルを重ねながらも、外部に伴走支援をしてもらえないかと模索中で、費用や長い期間をかけられないこともあり、頭を悩ませていたところでした。快く引き受けていただきありがとうございます。

短期間だったにもかかわらず、細やかなヒアリングで迅速に弊社の事情を把握し、弊社の実務に直結する内容の研修を構成してくださいました。心から感謝申し上げます。

和田:こちらこそありがとうございます。

Gemini 勉強会に100人以上が参加

片山様:今回の勉強会は、Gemini のいろいろな機能を理解し、推進役を担うAIトレーナー達がそれぞれの部署で抱えている業務をどのように解決していくかを身につけ、全社に広げていくことを目標としていました。

和田:弊社の社内勉強会にも来ていただいて。

片山様:御社が毎週金曜日に社内ナレッジの共有を目的とされた勉強会をされていると聞きまして、見学させていただきました。これが大きな刺激になったんです。私たちもこういう勉強会を行っていきたいと、一つの目標になりました。

今では、弊社の各部署をはじめ、関連会社、グループ会社も含めて、生成AIの使い方を共有する会を月1回、定期的に行っています。グループ全体に呼びかけて、オンラインでの参加も含めて毎回100人以上の参加者があります。

和田:部署などの垣根をなくして開催されているのですね。100人以上も参加されているのは素晴らしいです。

明知様:内容としては、スライド作成やGemini Deep Researchの基本、Google NotebookLM の話などを行いました。

前回はもう少し踏み込んで、アンケート集計のために、スプレッドシートをGemini に書かせることを行いました。私はスライド作成の話をしました。エリア毎に折り込みが異なりますので、それを示した地図とエリアごとの年齢層なども組み合わせて、配布プランを作った人もいます。うまくAIを組み込むチャレンジをしているんです。

和田:そのような取り組みをされている新聞社はほかにもありますか?

片山様:九州のある地方紙では、Difyというサービスを使って編集業務や営業業務に活用できるAIを作り、社内ポータルにおいて活用しているところもあります。とても進んでいますよね。

フィードバックを基本に構成し社員の成長を促す

和田:他社にもAI活用の伴走支援を依頼したご経験があるとのことですが、価格やコンテンツなど気になった部分はありますか。

明知様:私の印象としては、「帯に短し、たすきに長し」という印象でした。社内でまだ知識や活用面でばらつきがある中で、基本的な話だけだと物足りなく感じる人もいれば、高度な話についていけない人もいるなど、なかなか適切なレベルが見出せないということがありました。

和田:私たちが実施した研修は、Gemini の機能ごとにそれぞれ別の章として構成しているため、一つのテーマについていけなくても、次のテーマでリセットできるのが良かったのでしょうか。

片山様:御社の場合、ハンズオンで勉強をしていく構成が良かったと思っています。eラーニングも試しましたが、聞くだけではしっかりスキルとして定着しないんです。

和田:そうですね。おっしゃる通りだと思います。

片山様:御社の講師とサポーターメンバーの皆さんが、弊社の課題を自分ごとと認識して、担当してくださることがありがたいなと思いました。こちらが持っている課題を理解していただき、打ち合わせを重ねて、ではこういうふうにしましょうと提案していただける点が一番良かったと思います。

和田:ありがとうございます。2回開催しましたが、1回目のフィードバックを受けて2回目のコンテンツを作っていったので、フィードバックに対する対応はしっかりできていたのではないかと思っています。

明知様:はい、それはとても感じました。1回目で少し難しかったと思っても、2回目では難易度が調整されていました。

片山様:勉強会の後に参加者アンケートを行い、共有してお話ができたのが良かったと思います。2回目の勉強会後もアンケートでは「今回はよくわかった」との声があり、「今後AIを積極的に活用したい」という回答が初回よりも10ポイント上がったことで、手応えを感じました。

和田:それは良かったです。安心しました。

日常生活の中でもGeminiを活用して、活用度アップを目指す

和田:社内では先にGoogle Workspace を活用されていたので、Google Workspace のアプリとの連携や、既にGoogle Workspaceに保存されているファイルを活用したシナジーも見込めたと思いますが、いかがでしょうか。

片山様:正直言うと、現在は過渡期です。生成AIの波に乗ってくれる人と、今でも従来通りにWordやExcelを使用している人がいます。なかなか同じ方向にはいかないものです。特にリモートで仕事をする場合などは活用してほしいので、これからも声掛けはしていきたいと思っています。

明知様:本当の意味で活用するには、やはりWorkspace 活用も深めていかないといけないと思います。

和田:肌感覚では、現在、何%くらいの方が活用できていると思われますか。

片山様:7月と9月、それぞれ1ヵ月間で、7~8ポイントくらい上がっています。これまで触ったことがなかったけれど、触るようになったという人も70人ほど増えました。これは研修のおかげですね。

やはり、仕事のどんな場面で役に立つのか、本当に使えるのかがわからないという人が多いんです。それが研修を経て「こんなふうに使えるのか」と具体的に理解し始めたところなのだと思います。よく伝えるのは、「業務に使わなくてもいい。生活の中で、“ググる”かわりに、Gemini を使ってほしい」と。

現在行っている事例共有会では、ある社員が自分で研究をして、部署のローテーション組みに生成AIを活用した事例がありました。ローテーションを組むためには記事やコラボなどの担当割や一人が連続しない、休暇などを考慮するといった様々な条件があります。完全な自動ではなく、ひとによる手直しが前提になりますが、ローテンション組みは負荷の高い業務なので、これは生成AIが有効活用できそうです。

和田:スキル次第というところがあるのかもしれませんが、今後はそういう事例が増えていくといいですね。

片山様:そうですね。制約がある編成業務でAIは有効活用できると思います。人による最終調整と併用していくことを考えると、さらに活用の幅が広がるのではないでしょうか。事例共有会でこんなことをしたと手を挙げてくれる人が増えたら面白いことになると思っています。

明知様:もっと能動的な参加が促せるといいですね。

和田:チャットなどで自由に発言できる場所を設けられるとよいですね。

補助的ツールからパートナーへ

和田:社内で生成AI活用のゴールは決めていらっしゃいますか。

片山様:現在は私たちが業務で活用していますが、今後は、AIを活用して中国新聞デジタル版の読者に何かサービスを提供すること-例えばレコメンドの記事を送ったり、音声の読み上げサービスなども実現できたらと考えています。

明知様:活用の方法として2つあると考えています。まずは業務改善。そしてもう1つは、ユーザーにとって新しい価値を作るということですね。

和田:御社のサービスである「中国新聞デジタル」やプラットフォーム「たるぽ」にうまくアドオンして、いちからサービスを立ち上げるのではなく活用できると面白いのではないでしょうか。

片山様:会員の趣味や思考などをAIでうまく研究していけるといいですね。導入当時から考えているのは、AIは私たちの仕事のパートナーということです。今後も一緒にやっていきましょうという考えを社内で広めていきたいと思います。

明知様:現状はまだ途中過程で、パートナーというよりは補助的ツールに過ぎないと思うんです。今いる人の力を最大限に発揮できる、積極的な活用方法を探り出していければいいですよね。そこまで行ければパートナーになれると思います。

和田:ありがとうございました。今回のようにハンズオンやフィードバックを重視したカスタマイズ研修をご提案できるのが弊社の強みです。今後ともご相談いただければ嬉しいです。

<本インタビューを動画でも公開しています。ぜひあわせてご覧ください。>

  

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